最高裁判所第三小法廷 昭和31年(あ)2178号 決定 1956年11月27日
主文
本件各上告を棄却する。
理由
弁護人白石基の上告趣意第一点について。
所論は、原審で主張も判断もなかった事項について違憲を主張するのであって、適法な上告理由と認められない。(記録によれば、第一審において、裁判官大西信雄が、被告人星加一の第一回公判(昭和三〇年八月二日)の前日、その後右被告人と併合審理された相被告人仙波頼太郎外二名について第一回公判を開廷し事件を審理し、その際、後に右被告人星加一の審理において提出された証拠が取り調べられたことが認められる。しかしこのような相関連する事件の審理においてたまたまある証拠調の重複があったからといって、この一事で直ちに被告人に憲法三七条一項によって保障されている公平な裁判所の裁判を受ける権利が侵害されるといえないことは、当裁判所の昭和二八年(あ)第二三九二号同二八年一〇月六日第三小法廷判決〔集七巻一〇号一八八八頁〕の趣旨に徴し明らかであって、論旨自体としても採用できない。)
同第二点について。
所論は、原判決の違憲を主張するが、その前提とする理由は、原審で主張判断がなかった事項に関するものであるから、適法な上告理由にあたらない。(なお所論の前提とする公職選挙法上、いわゆる選挙違反の被告事件については、原則として他の事件に優先し、訴訟の判決は、事件受理後百日以内にするように努めなければならない方針が採用されていることを目し、他の刑事事件と区別し拙速主義による杜撰な審理であるという主張は、独断の見解であってなんら根拠はなく、違憲の主張としても前提を欠くに帰する。)
同第三点について。
所論は、事実誤認と単なる法令違反の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(また所論の非難する点について記録を調べてみると原審の判断が相当であって誤りとはいえない。ひっきょう所論は独自の見解を主張するにすぎない。)
また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。
よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 小林俊三 裁判官 島 保 裁判官 垂水克己)